『ロシュフォールの恋人たち』再見

『シェルブールの雨傘』に続いて、『ロシュフォールの恋人たち』を久しぶりに観直しました。シェルブール〜はすべての台詞にメロディーが付きますが、けっしてミュージカルではありません。一方、ロシュフォール〜はまぎれもないミュージカルです。実際のところ、アメリカから『雨に唄えば』のジーン・ケリーや『ウエスト・サイド物語』のジョージ・チャキリスが招かれ、踊り演じています。
それにしてもジーン・ケリーというのは素晴らしい俳優です。あの「何も考えていません・何も見ていません」という瞳でさっそうと画面に現れたかと思うと、彼の周りの重力は通常の人の半分しかないんじゃないかという軽やかさで不意に踊り出しては人々の目を釘付けにし、カーニバルが近づく街の興奮や、恋いこがれた恋人にやっと会えた喜びを、彼にしかできないやり方で表現してみせます。
ロシュフォール〜を観た後、『雨に唄えば』も観直しましたが、ちょっとあり得ないくらい面白かったです。自己言及的でありながら(トーキーが映画産業にもたらす変化が主題のひとつ)、なんだか意味もなく爆笑してしまうあの破壊力はすごいです(笑。マテリアルをより付けるためのスレッドのようなぼんやりした筋があって、あとは歌って踊って最後まで突っ走ります。