風説の流布

kechida2006-02-20

1月25日付の京都新聞web版に「18億匹のホンモロコ 稚魚を放流へ/ 滋賀県 08年度から3年かけ」という記事がありました。この記事ではホンモロコ減少の原因が以下のように指摘されています。

漁獲量は1995年までは年間約250トン前後で推移していたが、96年に急減し、04年には5トンにまで落ち込んだ。県水産課は琵琶湖の水位操作のほか、外来魚のブルーギルブラックバスに卵や稚魚が食べられたのが原因とみている。

ボンヤリと覚えていますが、ちょうど10年前くらいはたしかに琵琶湖の異常水位がバス釣り人たちの間で話題になっていました。それに続いてカナダモが大発生したような記憶があります。
その後、地方新聞が一斉に続報を報じました。どこかの通信社が配信したニュースをそのまま掲載したのでしょう。なぜか京都新聞は入っていません。とりあえず2月17日付け徳島新聞web版に掲載された「“琵琶湖の味”復活作戦 ホンモロコ、18億匹放流」をどうぞ。この中ではホンモロコ減少の原因が以下の通り書かれています。

県水産課によると、ブラックバスなどが卵や稚魚を食い荒らしたためで、10年前は年間200トンの漁獲があったが、2004年度は5トンに落ち込んだ。

まず、「ブラックバスなど」と書いてブルーギルに触れていない段階ですでに作為が感じられますし、前述の琵琶湖の水位操作の影響については何にも書かれていません。しかも最初のニュースではただ「食べられた」とだけされていますが、2番目のニュースでは「食い荒らした」となっています。
「琵琶湖 水位操作」でググってみると水のめぐみ館「アクア琵琶」という施設のHPに「琵琶湖の水位とくらし ビワズ通信第45号」という記事がありました。その記事中「琵琶湖の水位と魚の生態について詳しい滋賀県琵琶湖・環境科学研究センターの総括研究員で理学博士の西野麻知子先生」は以下のように話してます。

ところが、近年は内湖やヨシ帯が減ったことや、洪水を防ぐために行われる水位調節によって、産卵に必要なかずかずの条件が次第に整わなくなっています。

また「毎日の暮らしの中で琵琶湖の魚の生態を見つめ続けてきた朝日漁協(滋賀県東浅井郡)の松岡正富さん」は以下のように話してます。

雨が降り、それによって水位の上昇を察知した魚が、浸水したヨシに卵を産みつける。ところが、梅雨や台風に備えて、上昇した水位を下げるために洗堰から一気に水を放流すると、一夜にして水際が後退し、ヨシが大気にさらされる。その結果、卵が干上がって死んでしまうのです。10センチの水位操作といっても、それは湖岸では水際が何メートルも後退することになり、その影響は魚の産卵に大きな影響をもたらすこととなります。

2番目のニュースは今はやりの風説の流布ってヤツだったのでしょうか? 操作しようとしているのは株価ではなくて世論なワケですが。
◇写真は西岡忠司さんのバスのウッドカービングです。昔A&Fで買ったと思うのですが記憶が曖昧。