天使の視線


このエントリを書くにあたって、再度ヴィム・ヴェンダースの『ベルリン 天使の詩』と見比べて確認したわけではありませんが、Massive Attack の名曲「プロテクション」(『プロテクション』所収)のヴィデオクリップは『ベルリン〜』の冒頭の映像を意識しているはずです。
『ベルリン〜』においては浮遊するキャメラがとらえる画像は、天使の視線から見た人間界なワケです。しかし天使は無力です。自殺しようとする人の傍らにありながら、どうすることもできません。オットー・ザンダー演じる天使は、悲嘆にくれる人が虚空へ身を投げ出すのをとどめることはできず、ただ虚しく顔を覆うだけです。なにより、天使達は「ベルリンの壁」に代表される人間の愚行に対して何もすることができなかったのですから。
「プロテクション」で歌を歌うのは、Everything but the Girl のトレイシー・ソーンです。「女の子以外はなんでも(売っている)」という雑貨屋がその名の由来だというこのユニットの歌い手の歌声はいつもどおり素晴らしいです。マッド・プロフェッサーによってズタズタにリミックスされたダブ・ヴァージョン「Radiation Ruling the Nation (Protection)」(『ノー・プロテクション』所収)もキマります。