笠地蔵

kechida2006-12-14

先日、保育園でお遊戯会がありました。2歳児クラスのウチの子は金太郎の踊りをしていただけですが、一番年上の5歳児は笠地蔵を演じてました。私はもともと涙もろいのですが、なんだかメチャメチャ泣けました。あらすじはコチラなんかをどうぞ。
実際の世の中は、他人を出し抜き、押しのけ、懐の財布に手を突っ込んでその金を掠め取って……といった感じで、子どもたちが演じた世界とは大きく異なります。とかく人の世は住みにくいです。
ところで、柳田国男の『山の人生』の第一節「山に埋もれたる人生あること」では、悲惨な事件を淡々とした調子で語り、なんとも忘れがたい印象を刻み込みます。長くなりますが……。

 今では記憶している者が、私の外には一人もあるまい。三十年あまり前、世間のひどく不景気であった年に、西美濃の山の中で炭を焼く五十ばかりの男が、子供を二人まで、鉞(まさかり)で斫り殺したことがあった。
 女房はとくに死んで、あとには十三になる男の子が一人あった。そこへどうした事情であったか、同じ歳くらいの小娘を貰ってきて、山の炭焼き小屋で一緒に育てていた。(…)何としても炭は売れず、何度里へ降りても、いつも一合の米も手に入らなかった。最後の日にも空手で戻ってきて、飢えきっている小さい者の顔を見るのがつらさに、すっと小屋の奥へ入って昼寝してしまった。
 目がさめて見ると、小屋の口一ぱいに夕日がさしていた。秋の末の事であったという。二人の子供がその日当たりのところにしゃがんで、頻りに何かしているので、傍へ行って見たら一生懸命に仕事に使う大きな斧を磨いでいた。阿爺(おとう)、これで私たちを殺してくれといったそうである。そうして入口の材木を枕にして、二人ながらに仰向けに寝たそうである。それを見るとくらくらとして、前後の考えもなく二人の首を打ち落としてしまった。それで自分は死ぬことができなくて、やがて捕えられて牢に入れられた。