Studies of Fenglass

フェングラスのフライ・ロッドは全部で4本持っている。最初の1本はナント結婚のお祝いにいただいたもので、FF756-4 、いわゆる Voyageur ってやつだ。その当時はフライをやっていなかったので、そのまま押し入れの肥やしになっていた。
フライを始めた当時は Orvis の 8'6", #6 を使っていたのだが、ふと7フィート半という長さは浮き輪からの釣りには最適なんじゃないかと思って投入し、いきなりバスが釣れた。その当時は投げ心地がどーのこーの言えるような腕前ではなかったが(今もヘタだけど)、魚を掛けたときの吸い付くような調子は強く印象に残った。
それ以来、ポツリポツリとフェングラスを集めている。現在のところ、フローターからのバス釣りには 、FF807という竿がもっとも使いやすい本気汁タックルとなっている。756では52cmを釣った。756-4は八郎で46cmを釣った。858と705というのを入手したい。
この企画は、僕が所有する4本の竿を比較したもの。基本的に何も知らないので、即物的な比較と稚拙な印象を述べることしかできない。詳しい方がいらしたら、ゼヒともご教示くださいませ
なお、Fenwick社の歴史についてはコチラをどうぞ。リールはこんなのをあわせている。

スペック表示とロゴ


756-4の「Voyageur」のステッカー。文字の右側にはカナディアン・カヌーを漕ぐ人、上には飛行機が配されている。

909の「FERALITE」のロゴステッカー。「U.S. Pat. 3.186.122/TWIST ON・TWIST OFF/LUBRICATE WITH PARAFIN」の表記がある。
[スペック表示]
いずれもイタリックのサンセリフ(ヒゲなし)書体。909は他より書体が細い。756-4は竿の長さが「7 1/2'」と表示されているのに対し、756は「7'6"」と表示される。
756-4は756より1/4oz.重い。これはジョイントが多いからだろう。
ロゴマーク
756-4、756、807はワシのマークは同一だが、807は文字の色が異なる。これは褪色・変色しただけか。909はワシのマークも書体も異なる。資料などで裏をとったわけではないが、Fの横棒が長いロゴの方が古いものだと思われる。756-4のみシール全体が楕円形、756と807は角丸の長方形、909はただの長方形。
[製造番号]
そもそも製造番号なのか? 756と807の書体は似ているけど微妙に違う気がする。756がロゴマークの直下にあるのに対し、807は反対側にある。756-4と909は直下にあるが書体が異なる。807のみ製造番号が別シールになっているが、それ以外はロゴと同じシールに記されている。
僕はこのシリアルから何の情報も読みとることができない。
[ブランクの色]
写真で睚??襪箸?蝓909だけやや明るい茶色。また、光に透かしてみると909のみ光をよく透過する。それ以外の3本はほとんど不透明。909はブランクが薄いようにも思われる。これは9番だからなのか、それとも製造時期の違いによるものなのか。

グリップとリールシート

左:上から、756-4、756、807、909
中:上から、807、756、909、756-4
右:909のエクステンション・グリップを付けた状態。ダブルハンドの竿として使うためのものだろう。
[グリップ]
どれもリッツを削り込んで整形したような独特の形状(独自の呼称があるのだろうか?)。リールシートを含めた長さは909のみちょっと長くて約29.5cm、あとの3本は約28cm。
[リールシート]
リールシートは長さ約10.5cm、金具はすべてアルミで、独特の赤茶色に塗装されている。
807と756はアップロックでスペーサーはコルク。エンドキャップはおそらくラバーでロゴ入り。現代の竿のように上側の金具がグリップ内に埋め込まれておらず、むき出しなのが特徴。グリップの形状と相まって独特の雰囲気を醸し出す。
756-4はダウンロックでアルミのスペーサー。スペーサーにロゴの刻印あり。
909も同じだが、ナットが二重になる。また、909はエクステンション・グリップが付属するので後端のゴムキャップは取り外し可能。ここにエクステンション・グリップ差し込む。

フックキーパーとワインディング・チェック

[フックキーパー]
756と807は独特のフックキーパーが付く(左)。756-4と909は普通のワイヤー製(中)
[ワインディング・チェック]
おそらくラバー製。グリップと一体化するような形状。

ガイド

[トップガイド、スネークガイド]
ごく普通のクロームメッキされたタイプ。
[ストリッピング・ガイド]
807のみ、(おそらく)セラミックのリングが嵌ったタイプでしかも3本足。756、756-4、909はクロームメッキの2本足。

スレッドほか

[スレッド]
バットの飾り巻きは909だけ微妙に違う(左上が807、左下が909)
それ以外のスレッドはブランクとほぼ同色と茶色がメインで白のスレッドで縁取る。バット部分に幅3cm程度の巻きがある。単なる飾りなのか、あるいはアクションを変えるためのものなのか。この部分とフェルールは、さらに黒のスレッドで縁取られる(右)。現在よく使われるスレッドよりやや太いように見える。
[フェルール]
今となっては当たり前のフェラライト・フェルール(スリップ・オーバー・フェルール)。当時のフェンウィックのロッド・デザイナー、ジム・グリーンが考案したもの。それまでは、ブランクをふたつ(あるいはそれ以上)に切り分け、金属製のフェルールで継ぐのが主流だったのを、金具を使わずにロッドを継ぐことにより、1ピース・ロッドにより近いアクションが出せるようになった。

アクション

グラファイトと比べたら明らかに「グラス」なのだが、グラスにしては振り抜けが良いシャキッとした調子だと思う。少なくともスローとは言えないだろう。特に807と756は竿を振るのを止めても、ベロンベロンとブレない。ジム・グリーンが言うところの「ポジティブ・ストップ」を実践するための設計なのだろう(『フライ・ロッダーズ』2002年9号、pp.50-53)
909はけっこうブレる。これは僕の手首の弱さや、竿の重さの関係もあるのだと思う。というのも竿尻に左手を添えて振るとブレないからだ。また、グラスロッドでこれぐらい高番手でしかも長さも9フィートとなるとどうしても無理が出てくるのかもしれない。
ちなみに、前掲FR誌のジム・グリーンの文章を読むと、彼自身は基本的にファスト・アクション志向であることが分かる。そもそもフェンウィックがグラス素材を使ったのは、バンブーより軽くて丈夫で安価なロッドを作ることができたからだ。だから、グラファイトと比べてスローなグラスの特性を活かして作ろうとしたロッドとは言えない。例えば、バンブーのようなアクションをグラスで再現したロッドでは決してない。当時、最先端の素材を使った、というだけのことである。それが逆に、グラスのフィーリングを残しながらも、グラファイトが主流の現代でも十分実用に耐えうるようなアクションと感じられる理由となっているのではないだろうか。

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Masahiro さんのサイトで Fiberglass Fly Rod という本が紹介されている。機会をつくってぜひ読んでみたい。