飛行機ミステリ

まったくの偶然なのだが、最近読んだミステリいずれもが飛行機上を殺人の舞台として選んでいた。

魔剣天翔 Cockpit on Knife Edge (講談社文庫) 〈クラシック・セレクション> ハートの4 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

前者は森博嗣のVシリーズ第5弾。僕は森ミステリの中では『冷たい博士と密室たち』がもっとも好きなのだが、今のところそれに次いで好きな作品。
主人公というか探偵役の瀬在丸紅子*1は次のような言葉を口にしてからその推理を述べる。

そう、簡単なことです。ただ、これが正しいと主張するつもりは私にはありません。私が知り得た範囲の事柄を、ちょっと工夫して組み合わせれば、たまたまこの形になる。この形なら辻褄が合う、というだけのことです。(『魔剣天翔』文庫版、p.401)

紅子の推理はp.415までで、たったの14頁で終わる。ワトソン役が間抜けな推理を披瀝して探偵役がそれを覆す、みたいなこともない。でも、トリックはとってもスパイシー。締めの言葉は以下の通り。

これで、終わりです。あとはこの線でいろいろ調べてごらんになって。見る角度さえ的確ならば、必ず証拠が見つかるでしょう。動機だって、人間関係だって、それなりのものが出てくるはず。でもね……、そういったものに、私は興味がありませんので、もうお伝えいただかなくてもけっこうです。(同前、p.415)

著者はVシリーズを「シンプル、シャープ、スパイシィのSSSです」と言うが、僕は本作においてもっともその試みが成功していると思う。
一方のエラリイ・クイーン*2、ハリウッドに乗り込み事件に巻き込まれる。
★以下後日

*1:「せざいまる・べにこ」と読む

*2:早川書房は「エラリイ」と表記し、創元社は「エラリー」と表記する。どうでもいいことだが