四季、あるいは壮大な新体操

kechida2006-12-17

森博嗣の『四季 春 (講談社文庫)』と『四季 夏 (講談社文庫)』を買ってきました。『春』は読了。『夏』を読んでいる最中ですが、ほとんどオールスター出演の様相を呈し始めているわけで、この人ホント楽しませてくれます。
クラシックの交響曲や、良くできたミステリはしばしば壮大な新体操のように見えます。すなわち新体操と言えば、舞台の角でリボンとか輪っかとかボールとかをポーンと放り投げ、ピョンピョン跳んだり跳ねたり転がったりしながら対角線上を移動し、やがて落下点で自分が放り投げたものを見事キャッチするわけです。これを壮大なスケールでやっているように見えるのです。
それにしても、この真賀田四季という天才少女が、クラシック音楽とか、美術とか、文学とかをどう評価しているか聞いてみたい気がします。例えばマーラー交響曲5番とか。『春』ではお馴染みの引用文がコレットの『シェリ』(私は未読)なんですけど、エロティックな引用が目立ちます。また、お話も性、そして死に積極的に言及しています。これまでの森ワールドでは、萌絵&犀川シリーズだったら性はまったく排除されていたし、紅子シリーズでは異常な殺人衝動みたいなものについて言及はあったものの、モラルを越えた何かがあるとほのめかすだけだったのですが、そこに一歩踏み込んだ印象を受けます。
森博嗣は文学か?というという問いは、エッシャーのだまし絵は美術作品か?と問うことに似ている気がします。私はなんと答えたらよいかよく分かりません。