Keep on Movin'


アンダーグランドだったものが、何かの拍子でメインストリームに噴出してくることがあって、それはあたかもマグマのように赤く鈍く光っていて、ものすごい熱を孕んでいるものの、いつしか冷やされ固まってしまうということはもちろん残念なことでもあるのだけれど、そんな瞬間に誰でも一生の間、一度や二度は立ち会っているもので、やはりそれはとても貴重な体験なのじゃないかと思ったりするのは、「一生」なんて書きましたが、実際、このような瞬間に出会うためには、それを受け取る側にもある種の素地が必要なワケで、もはや自分にそんな瞬間が今後訪れることはないのじゃないかと、寂しい思いに駆られたりもする秋の夜長です。
のちに「グラウンド・ビート」とも呼ばれるようになる、この独特のリズム感は当時流行りはじめていたマッキントッシュによるDTM(Desk Top Music)によるところが多い、と音楽評論家の高橋健太郎が『ミュージックマガジン』誌で書いていたと記憶しています。すなわち、当時のシーケンサーには不可能な「シャッフル率=55%」みたいな微妙な「ハネ」を打ち込みで表現できるようになったからです。もちろん、人間がドラムを叩けば微妙な「ハネ」は表現できるわけですが、打ち込みによる無機質なビートが微妙にハネているところがクールでファンキーだった、と考察していた気がします。当時の普通のシーケンサーでシャッフルを表現しようとすると、3連符を使わざるを得ず、すなわちシャッフル率67%になるわけです。コンピューターの場合、1小節を512分割とかできるわけで、それによって微妙にヨレてハネるビートが可能になったわけです。
それにしても、このはじけるような踊りを見ていると、生きている喜びや、プライドをダンスや肉体で表現しているようでもあり、眩しいばかりです。ストリングスはレゲエ・フィルハーモニク・オーケストラというグループによるもので、そのネーミングにも茶目気とプライドが入り交じった絶妙なセンスを感じてしまいます。