夜のフラヌール

仕事が早めに終わると事務所がある虎ノ門から四ッ谷駅までブラブラ歩いて帰ります。まずはホテルオークラの脇を通り、アメリカ大使館を目指します。大使館前の警備はいつもものものしいです。私は大使館前から大使館を迂回するように道路を渡り、ざくろの前を通って溜池山王方面を目指しますが、左へ曲がる道は霊南坂になります。霊南坂を上ると山口百恵が結婚式を挙げた霊南坂教会があります。設計は赤煉瓦の東京駅舎を設計した辰野金吾。そして、かつてこの辺りには建築家アントニン・レーモンドの「霊南坂の自邸」がありました。余談ながら、話せば長くなるのですが霊南坂アーネスト・サトウの記憶とも結びついています。これはまたの機会に。

左:ハンス・ハンター事務所跡地に建つ赤坂インターシティ
中:ざくろ日本橋の店に一回だけ行ったことがあります。右:溜池交差点付近。

アメリカ大使館をちょっと通り過ぎた辺りには、われらがハンス・ハンターの事務所がありました。この設計もアントニン・レーモンド。ここを通り過ぎるとすぐに溜池山王になります。名前の通り、江戸時代には溜池があったようです。ちなみに、虎ノ門から新橋方面を目指すと汐留にいたるわけで、ようするに昔は「汐留」でした。後述の「清水谷公園」なども加えると、この周辺には「水の記憶」のようなものが多く眠っています。しかも、実際に歩いてみると分かると思いますが、このコースの左右には微妙な高台が連なり、谷間を形成しています。

左:赤坂見附へと続く飲屋街。中:弁慶橋ボート店。左:日本庭園とホテルニューオータニ
右手に一瞬チラっと国会議事堂の屋根が見え、左手には議員宿舎、TBSなどを見やりつつ、赤坂見附までおよそパサージュコチラコチラもどうぞ)とは呼びがたい繁華街を歩きます。赤坂見附ホテルニューオータニの前には弁慶堀というお濠があって、レンタルボート屋が営業しています。今はどうだか知りませんが、昔はブラックバス釣りができました。私はここから、ホテル・ニューオータニのロビーをそしらぬ顔で通り抜け、日本庭園をブラブラし、母校の脇──ここにもレーモンドの作品があることを最近知りました──を通って四ッ谷駅に向かいますが、左へ曲がってホテル・ニューオータニの中に入らず、直進すると清水谷公園にいたります。この辺りで大久保利通が暗殺されました。桜田門外の変で暗殺された井伊直弼の屋敷の近くでもあるわけで参照、幕末〜明治のテロルの記憶を多く留めている地だとも言えます。
以上でざっと40分ほどの散策になります。寒くてジョギングする気にならない冬の唯一の運動です。