ベトナム戦記

ベトナム戦記 (朝日文庫)

ベトナム戦記 (朝日文庫)

私は『オーパ! (集英社文庫)』をはじめとする釣り紀行文を通じて開高健に深く親しんでいます。一方、「作家」としての開高健は詳しく知らず、家の書棚には開高健の文学作品は『パニック・裸の王様 (新潮文庫)』しかありません(恥。私が不勉強なだけだとは思いますが、釣り人の側から作家としての開高健を論じたり、文学の側から釣り人としての開高健を論じたものを眼にしたことがありません。ヘミングウェイ井伏鱒二だと「釣り」と「文学」の閾はもう少し低い気がするのですが、開高健においては両者は乖離しているような印象を持っています。
このふたつを結びつける鍵になるのが、昔、当ダイアリでブツブツと話題にしたことのある開高健ベトナム従軍体験なのではないかという予感を漠然と持っていました。そんなわけで、ようやく『ベトナム戦記 (朝日文庫)』を読みました。以前話題にした「まじない」についての記述を見つけることができませんでした。この件については、現在は自分の無知をひたすら恥じているところで、作家自身による訳があることを最近知りました。おそらく『生物としての静物 (集英社文庫)』というエッセイ集に収録されているのではないかと想像されます。あるいは『輝ける闇 (新潮文庫)』なのかもしれません。乗りかかった船というか私なりに納得したいところであるので、いずれも機会を見て必ず読むつもりです。
で、相変わらず生煮えなのですが、この『ベトナム戦記 (朝日文庫)』において後の釣り紀行文に通じるスタイルを確立したのは確かなことに思えました。