優雅で感傷的な日本フライフィッシング──養沢川

kechida2008-03-10

日曜日に養沢川に行きました。
なんとなく日本のゲーム=スポーツ・フィッシングの起源に疑問を抱いています。日本のフライフィッシングの起源を紐解くと、そこには必ず外国人やセレブリティの存在があり、そこで思考停止してしまいます。外国人が日本にもたらしたからカッコイイ、元華族などのセレブリティが入れ込んでいたから粋だ、漁ではなくてゲーム=スポーツであり、それまでの野蛮な日本の釣りとは一線を画すから素晴らしい……、フライフィッシングこそ優雅で感傷的な大人の趣味である! 
フライフィッシャーマンが奥日光を表現する際、その風景はしばしば「日本離れした」と言われます。いやいや、まぎれもない日本なんですけど……と思います。そもそも鎖国を日本にもたらした家康が祭られているのですけど、何か? カワマス? それは外来のブルックトラウトでしょ? ブラックバスと何が違うのですか? 調査? キャッチ・アンド・リリース? 外交官や元華族? 日本の国民や国土を食い物にして、私腹を肥やしていた連中ばかりじゃないのですか? 山を越えた渡瀬は鉱毒垂れ流しでズタズタにしたじゃぁないですか? でも、日本のフライフィッシングの起源はつねにセピア色のメロウでスイートな記憶で彩られています。
養沢毛鉤専用釣場はトーマス・ブレークモア記念財団が運営母体です。トーマス・ブレークモアが何者か知る人は少ないと思われます。もちろんそれは私のことでもあります。その名を冠する法律事務所は現代の日本に存在しますが、そんなことはまったく知りませんでした。ディテールはひとまず脇に置いておいて、セレブな職業である弁護士だった外国人である、という事実だけがあれば十分です。大型犬を従え綿パンのまま川に立ち込む姿をとらえた写真なんかがあれば完璧です。完全に神話的な存在になります。私は以前、とあるブログで『東京アンダーワールド (角川文庫)』という本に養沢の起源が記されている、と間接的に教えていただいたことがありました。そのことはちゃんとメモを残し、しっかり記憶していました。ようやくその本を読み終え、無性に養沢川へ釣りに行きたくなりました。この本を読むと、養沢川は「自然渓流を利用した毛鉤専用のフィッシングエリア」とだけには思えなくなります。そこには歴史や記憶のようなものが折りたたまれています。すぐ近くの横田基地の真ん前にあるピザ屋「ニコラ」にも行きたかったのですが、時間がありませんでした。
釣った魚は規定の10匹までキープして持ち帰りました。魚を捌き、調理するのは釣り人の基本的技能だと思っているので、ふだんはキャッチ・アンド・リリース派ですが、捌き方忘れてしまわないように年に一度ぐらいは釣った魚をキープします。釣り場の洗面所でワタを出していたら、年配の釣り人に「釣った魚を食うのはいいことだ」と言われました。反発したい気持ちもありましたが、素直に言うことを聞いていました。どう食ったら一番美味いかもワザワザ聞いてみました。
追記:文が長くならないように、極力簡素な文章を心掛けているのですが、若干舌足らずなところがあり、余計な誤解を招くといけないので補足すると、『東京アンダーワールド』によればトーマス・ブレークモアは「東京で史上もっとも成功した外国人弁護士である」とのことで、けっして後ろ暗いところがある人ではなかったようです。