引き続き……

kechida2004-10-27

最近読んだ本。

1. 立花隆シベリア鎮魂歌 香月泰男の世界

本屋で立ち読みしてたらグイグイ引き込まれ、そのまま購入。本書は、シベリア抑留の経験を持つ画家・香月泰男が描いた「シベリヤ・シリーズ」といわれる作品群を論じたもの。最大の目玉は『私のシベリヤ』が再録されているってこと。香月泰男名義で出版された『私のシベリヤ』は実は駆け出しのころの立花隆ゴーストライターとしてまとめた本だという。これはとにかく読み応えがある。
後半は90年代にNHKで番組作りをした際に、テレビ番組に盛り込めなかった部分を講演会などで発表した時の原稿を加筆訂正したもの。そのためやや散漫な印象は否めないが、それでもまぁ面白く読めた。
本の作りにはやや不満を感じた。せっかく冒頭にシベリヤ・シリーズ全点をサムネールで示し、カラー図版でも紹介しているのだが、なにしろ照合するのが大変だ。単純に全作品に通し番号を付けて、作品に言及するときは必ずこの番号を示せば良かったのではないかと思う。
現在、巡回中の香月泰夫展は東京ステーションギャラリーで一度見たのだが、この11月から静岡県立美術館に巡回してくる。また見に行こうと思ったのだった*1

2. 森博嗣Φは壊れたね (講談社ノベルス)

森博嗣の本は文庫で揃えていたのだが、帯か裏表紙かのうたい文句に西之園萌絵の一語を発見し、思わず買ってしまった。ミーハーっつーかアフォっつーか……*2。言い訳をすれば本書ではルードヴィッヒ・ウィトゲンシュタイン『論理哲学論考』が引用されているのも購入にいたった原因のひとつではある。いちおうこの人のこの本を卒論のテーマに選んだもんなんで……。個人的にはこの引用はすごく良かった。内容も良かった。事件の関係者の足跡を時系列に提示するこの手の正統的なミステリは大好きである。
雑誌『ユリイカ』では西尾維新の特集が組まれたり、何かと話題の「青春エンタメ」みたいな推理小説風の小説と比べると本書のストイックさは際立つ。まさに「語りえぬものについては沈黙しなければならない」ってわけだ。
相変わらず、タイトルが意味するところを理解できなかった。

*1:本書では全57点あるシベリア・シリーズが東京会場には30数点しか展示されなかったことに苦言が呈されているのだ。

*2:本書を読了後、いろいろ気になって本屋で立ち読みして、まだ読みかけのVシリーズやこれから読もうと思っている「四季」シリーズに萌絵・犀川コンビ、そして真賀田四季がどう絡んでくるのかサラっと確かめてしまった! ケーキの上の果物やチョコだけを先につまみ食いしてしまったようなものか(笑。