草間弥生展@東京国立近代美術館

kechida2004-11-14

1929年(世界恐慌の年!)に生まれたというから、実に75歳になる草間弥生の展覧会に行ってきた。けっしてスポイルされることのない過激さを秘めつつも、誰にでも楽しめて、しかも美しい展覧会だった。僕自身は家庭や子を持ち、きわめて平凡な生活を送っているリーマンであるわけだが、いわゆる現代美術の展覧会を見に行くと、僕のような小市民に対し悪意むき出しの作家がいたりして、しばしば閉口する。悪意むき出しの作品を作るのは勝手だが、そんなの公立の美術館で展示するなよって思う。ま、別にいいけど。
1939年(10歳、すなわち小学5年!)に書かれた絵においてすでに水玉のモチーフが現れているのには驚いた。画用紙に鉛筆で描かれたこの絵は、「五年 草間弥生」と署名されており、吹雪舞う中に和服姿の女性の上半身が描かれている。この吹雪こそが草間弥生が生涯関わり続ける水玉のモチーフなのだ。
水玉の「玉」がどんどん大きくなってくると、地と図が反転して水玉模様というよりは網目模様に見えてくる。どの作品でも基本は、水玉か網目、そしてこれらが無限に反復し続けるわけだが、それがなんとも言えず美しい。合わせ鏡を用いたインスタレーション作品も着想は単純なんだけど、その単純さこそが作品の美しさ、作品世界の強固さを雄弁に物語っているようだ。
先週は静岡県立美術館に香月泰男展を見に行き、単なる平面/単なる表面でしかないタブローが持つ、無限の奥深さみたいなものに圧倒された。香月作品とは違った意味で草間作品も平面/表面が持つ無限の奥深かい世界をかいま見せてくれる。
とにかく面白かった。普段、美術館に連れて行っても絵なんかまったく見ていない1歳の息子も、水玉やら網目やら鏡やらで埋め尽くされた空間には何かを感じたようだ(写真)。充実した図録が2200円なのも感動した。常設展示はいつも通り日本近代美術の名品が多数展示されていて、しかも木村伊兵衛が特別展示されていたので、一日たっぷり遊ぶことができた。