最近読んだ本
1. 森博嗣『六人の超音波科学者 (講談社文庫)』
「いいえ、それは違う!」七夏が声を上げた。「それは立派な殺人です」
「殺人に、立派も貧相もないわ」紅子は微笑んだ。「法によって裁かれるかどうかも小事。良いですか?」彼女は園山を睨む。「問題は、貴女自身の評価なのです。貴女が、自分をどう評価するのかで、決まるのですよ」
森ミステリにはリスカなんて名前の少女が出てくることもないし、長崎が舞台だったりすることもないし、いわゆる少年犯罪が題材になることもない。森氏は潔い。「語りえぬことについては沈黙しなければならない」。にも関わらずというべきか、だからこそというべきか、上記のような一文がかなりの確率で解決編に紛れ込んでいる。僕はこの点にも森氏のプライドを感じる。
「深淵をのぞき込むとき、その深淵もこちらを見つめているのである」というニーチェの言葉をノートに書き付けていた神戸の少年Aが社会に復帰するという。奈良の陰惨な事件は未解決のままである。森氏の言葉はどこまで届くのだろう。
2. ウンベルト・エーコ『フーコーの振り子 上 (文春文庫)』
僕は、いわゆるオカルティズムにはまったく興味もないし、基本的には何も知らない。にも関わらず、なぜこの本を買ったかというと、ちょっと前に『エヴァンゲリオンの夢―使徒進化論の幻影』という本を読み、中途半端にオカルティズムの知識を仕入れたばかりで、なんとなく面白そうだなぁと思ったからだ*1。この選択は明らかに誤りだった。読み始めた当初は意味の分からない言葉に線を引き、後でオカルティズム辞典みたいな本を買って調べてみようと思っていたのだが、あまりに分からない言葉が多すぎて、線を引くのは諦めた。下巻のティフェレトの半ばまで到達したが、あとネツァー、ホド、イェソドの3章が残っている。読了できないかも……(ってゆーかこの本が読み終わらないために全然他の本が読めなくなっているのだ)