ゾルゲ本読了。

kechida2005-04-24

とりあえず本筋とはあまり関係ないヨタ話など。国際スパイであったゾルゲは帝国ホテルをよく利用したという。この当時の帝国ホテルと言えば、かのフランク・ロイド・ライト設計で、ゾルゲ本には以下のように記述されている。

 昭和八年版の『日本案内』には、帝国ホテルは「建築学的に見て、世界でもっとも興味深いホテルのひとつ」と記されている。これでは、フランク・ロイド・ライトの創造した逸品を正当に評価したとは言えない。旅行者たちは、この建物の外観をアステカの寺院と比較して、ここには何か沈思黙考しているような神秘感が漂っていると感じた。
 小孔(こあな)が無数にある暗黄色の石で作られたこのホテルは、湿り気を帯びて重々しく、山腹にある洞穴を思わせるものがある。歩廊や壁龕(へきがん)や彫刻のある柱が至るところに目につくロビーは、霊廟(れいびょう)の内部のような深遠な雰囲気を持っており、安手な金属製品など一つも使用されていない。

残念ながらライトによる帝国ホテルは1967年に解体されている。僕が気になったのは「小孔が無数にある暗黄色の石」という訳文のことである。これは間違いなく大谷石のことだろう。僕はライトの帝国ホテルのことを詳しくは知らなかったが、ちょっとネットで調べてもすぐ分かることである(たとえばココ 。このサイトの写真を見れば引用文の表現がけっして大げさなものでないことが分かる)。
ところで大谷石を使った建物というと、鎌倉の神奈川県立近代美術館を思い浮かべる。鶴岡八幡宮境内の平家池のほとりに建つこの建物は坂倉準三の設計になる(先ほどの大谷資料館のHPでも言及されてますね)。ピロティを採用している点などを見ても、設計者がル・コルビジュエの影響を受けていることはすぐ分かる。しかも、このピロティは内と外を曖昧につなぐ空間を構成し、この建物の最大の魅力のひとつとなっている。この一階部分の壁に大谷石がふんだんに使われているのだ。とても魅力的な空間となっている。
ちなみに二階部分の外壁にはスチールを採用し、ピロティとあいまって、建物をとても軽やかに見せている。この二階にある喫茶店は、これまたあり得ないほど気持ちいい。よい季節にこのベランダに腰を下ろして茶でもしばこうものなら、1時間は動けなくなるだろう。
◇写真は美術館から見た平家池。余談ながらこの池にバスやギルやライギョはいないと思うが、ミドリガメの名でお馴染みのミシシッピーアカミミガメは大量に生息している。鶴岡八幡宮の境内にあるという立地条件から、境内の露店などから逃げ出したものなのかもしれない。鎌倉の神社仏閣じゃぁリスなんかも大発生しているようで、それはそれで問題になっているようである。