ソ連フォーエヴァー

狂ったように房総の池にバスを追っていた頃、釣り仲間のH君がみつけた○七という蕎麦屋。最初の頃は釣りの合間に昼食を楽しむなんて心の余裕がなくてアレだったのですが、一度足を運んでみたところすっかり虜になりました。たぶん同じ時期に釣り仲間のsafariさんが紹介してくれたのが杉浦日向子ソ連編著の『ソバ屋で憩う―悦楽の名店ガイド101 (新潮文庫)』でした。ソ連というのはもちろんあのソ連ではありません。「ソバ好き連」を略した名称です。

「連」は、利害関係のない同好の士によって構成されたリベラルな集まりで、職業身分年齢性別のすべてをこえて成り立つ。
それは、釣り、囲碁将棋、歌舞音曲、素人芝居、盆栽、俳諧、陶芸、書画など、多種多様な道楽を、個人で行うより数段立体的に楽しむための装置として機能した。

私は西荻窪の鞍馬がうまいという価値観を共有しません。鞍馬は私にとっては高くて量が少ない店でしかありませんから(w。ですが、この本が伝える精神には感銘を受けました。題にもあるとおり「憩い」がこの本のテーマです。この本は究極の味を求めるグルメ本ではありません。大切なのは「憩い」なのです。この本では房総の○七は紹介されていませんが、それはどうでもいいことです。僕と僕の釣り仲間にとっては○七こそが憩いの場であり、杉浦氏とソ連が伝えたかった「憩い」を体現している場所に他ならなかったのです (ちなみにこの店のBGMはニューエイジ系です)。しかし、それはステーキ屋でもなければ、寿司屋でもないし、ラーメン屋でもありませんでした。蕎麦屋なのです。
報道によると享年46歳ということです。早すぎる死に困惑を憶えずにはいられません。合掌。
◇とある事情から、今週末に事務所が引っ越し。しかし、私の机の周囲はこの有り様。どうなることやら。