ウナギとポリリズム

Criterion Collection: Fishing With John 1-3 [DVD] [Import] ストレンジャー・ザン・パラダイス [DVD] ダウン・バイ・ロー [DVD]

Criterion Collection: Fishing With John 1-3 [DVD] [Import]』という釣り人的にはとても気になるインディ映画 (私は未見) を発表していたりもするジョン・ルーリーはラウンジ・リザース (Lounge Lizards) というジャズ (?) バンドのリーダーでありサックスも吹いています。ジム・ジャームッシュとの『ストレンジャー・ザン・パラダイス [DVD]』や『ダウン・バイ・ロー [DVD]』は我々の世代に忘れがたい強烈な印象を残しています。
そのジョン・ルーリー率いるラウンジ・リザースの『Voice of Chunk』というアルバムがあります。発表されたのは88年ですが実際に聴いたのは大学生だった91〜92年頃だったと思います。ものすごく大好きなアルバムで今でもよく聴きます*1。M1のなんとも美しい“Bob the Bob”からすでに、「3」と「4」の心地よいせめぎ合いが見られますが、M2の表題曲“Voice of Chunk”でブッ飛びます。私は音楽の教養がないので十分には分からないのですが、基本的には6/8拍子の曲なんだと思います。しかし、それを冒頭部分は変拍子風に奇妙にねじくれた演奏で聴かせます。陶然と聴いていると、いきなりバスドラを4つ打つ明確な6/8拍子が立ち現れます。この瞬間の気持ちよさは何度聞いても色褪せることがありません。しばらくフニャニャのサックスがグチャグチャに絡む演奏が続いたところで、今度はマーク・リボーのギターソロになります。演奏だけでも十分にカッコいいのですが、ヘッドフォンで聴くと、ステレオ効果を非常に有効に使った録音をしているように僕には聴こえます。そして、最後はエヴァン・ルーリーのピアノが硬質なリズムを刻みます。
88年と言えば、ワールド・ミュージックが流行りだすころです。アフリカの複雑なポリリズム中南米のめくるめくシンコペーションに酔いしれていた時代だったワケですが、ラウンジ・リザースはそれをジャズ (というかロック) の文脈から換骨奪胎してみせたと評価されていた記憶があります。
Voice of Chunk
ところでこの『Voice of Chunk』のジャケットにはなぜかウナギの写真があります。サックスを手にしたジョン・ルーリーの横顔の下に表題が入り、そして、なぜかウナギの写真が細長くレイアウトされているのです。気になって仕方がありません。

*1:アマゾンのレヴューで熱く語っている人がいますが、その気持ちはとてもよく分かります。