呼ぶことのできない名前

ポップスターであり、ともすれば露出狂のようにも見えるプリンスが自らの姿をいっさい姿を曝さない異様なまでにクールな映像。

私的には(というか誰もがそう感じると思いますが)1999 にはじまり*1、この曲が収録されたSIGN 'O' THE TIMES、そして、一度お蔵入りになったThe Black AlbumLOVESEXYあたりまでをプリンスの黄金時代だと考えています。私は以後のプリンスの良いリスナーではありませんでした。後にプリンスは改名し、♂と♀を組み合わせた独特の記号を自らのシンボルとします。特に呼び方を決めなかったので、The Artist Formerly Known as Prince(かつてプリンスとして知られていたアーティスト)という奇妙な呼び方をされました。個人的にはこの奇妙な呼び名と“Sign of the Times”の映像に似た趣向を感じます。すなわち、名前=顔を否定するという行為がある攻撃性をもって意図されているように感じるのです。大ヒットしたPurple Rainに収録された“I Would Die 4 U”は、この時期のライブのクライマックスでよく演奏されていた曲ですが、全編がとても奇妙な歌詞です。

I'm not a woman
I'm not a man
I am something that you'll never understand

プリンスはしばしばライナーに“Love God”と記し、時には自らをネ申と称するような、晩年のニーチェにも等しい暴挙に出たりします。
ところで、ユダヤ教の神はヤハウェとかイェホヴァという呼び名で日本では知られています。ヘブライ語で神を表す文字をアルファベットに「音訳」するとYHWHとなるそうです。これは神を示す四子音文字=テトラグラマトンなどと言われていて、神の名をみだりに呼ぶことを禁じられているユダヤ教徒は、この四文字を見ると「我が主=adonay」と読みかえるそうです。YHWHにadonayの母音を組み合わせると、YaHoWaH=イェホヴァとなります。非常に中途半端な知識で書いているだけなので、Wikiの記事などをご参照下さい(英語が得意な方はコチラも)。私の中ではこんなアレやコレやがやや強引に頭の中で結びついています。

*1:ちなみにこのジャケも狂気を感じる異常なコラージュです。