コスチューム・プレイ


30台後半ともなると、人間そのものがくたびれてきます。くたびれた人間はくたびれたものを好みます。ヨレヨレでクシャクシャで手垢にまみれて体臭が染みついたものを身にまとっているとホっとします。おろしたてのコートを着た刑事コロンボ役のピーター・フォークなんて想像すら出来ません。
そんなわけで、ちょっと古くさいベストを新調しました。10年だか15年だか20年だか前のものだと思います。胸のポケットにカワイイ刺繍があります。現代風に言うならストリーム・デザイン社の別注品ということになろうかと思われます。いわゆるデッドストック(死蔵品)なのでピカピカでシミひとつないところが気恥ずかしいです。早くヨレヨレになるように今年一年ずっと着続けるつもりです。わざと転びまくってなるべく早くボロボロにしたいです。どーでもいいことですが、何かの文学賞の授賞式に際し、村上春樹は青山のブルックスブラザースでスーツを新調し、洗濯機で洗濯してシワクチャにしてから賞に出席したとどこかで読んだ記憶があります。このベストに合わせてちょっと古くさげなトップローディングのデイパックも新調しました。アイロンをバリっとかけた大きな格子柄のシャツなんかと合わせたいです。ここ一週間ほど勤勉に毛鉤を巻き続けています。お金と時間とが許す限り釣りに行きたいです。
現代の日本ではちょっと違った意味を担っているけど、コスチューム・プレイとは直訳すれば衣装劇であり、ようするに時代劇のようなものを指すのだと思います。