別の象徴界

kechida2005-09-20

絡むとかそういうことではまったくないのですが、カブラー斎藤氏の「そいつは納得できん!」の第3回目「携帯電話でぐだぐだ。」について。電車の中で携帯電話で話している人になぜにかくも反感を覚えるのか、というのを精神分析医である斎藤環という人が上手に説明していました。要するに「電車という象徴界の中に別の象徴界想像界だったか?)が侵入してくるのが不愉快だ」みたいな話です。象徴界というのはフランスの偉大な精神分析学者であるジャック・ラカンの用語です。他に想像界現実界というのがあることになってます。おそらく東浩紀との対談での発言だったと思うのですが、家の書棚をあさってみたけど見つけることができませんでした。ググってみたら斎藤環生き延びるためのラカン 第1回 なぜ「ラカン」なのか?」という文章を見つけることができました。
この文章を読んでみると微妙に納得できない気もするのですが、大枠はそういうことだろうと思います。なんとなく違和感を覚えるのはウォークマンと化粧の話です。80年代に、ウォークマンの騒音が原因で殺人にいたったような事件があったと記憶してます。電車内での携帯電話の通話が原因で殺人事件が発生したことはないと思います。殺人にいたるほどの憎悪をかき立てたという意味ではウォークマンは携帯電話以上だと言えるのではないでしょうか。ってゆーか、ウォークマンがはじめて電車の中に別の象徴界を持ち込んだ装置なのではないかと。もしも今までウォークマンが存在せず、いきなり携帯電話が登場したなら、ウォークマンの登場当時以上に悲惨なことになったかもしれません。ウォークマンのおかげである程度免疫ができていたように思えます。
一方、化粧です。電車内で化粧をしている人は恥を知らないとか、他人の存在を無視してるとかよく言われますが、それは違うだろうと思うのです。なぜ化粧をするかといえば、自己満足という側面もあるでしょうが、一番大きなモチベーションは誰かに見てもらいたいということだと思います。要するに電車内で居合わせた乗客達は石ころ以下の存在でしかないワケですが、電車を降りた先で出会うだろう友人や仲間たちにはちゃんと化粧した自分を見てもらいたいワケです。むしろ、過剰に他人を意識しているのかもしれません。ただし、その他人は自分の知っている他人=友達だけなのです。
それだけなんですが。
◇写真は先日の台風が通過した後の事務所からの夕景。台風後じゃなくても夕焼けが美しい季節になりつつあります。