シートン──旅するナチュラリスト

シートン 第1章―旅するナチュラリスト (アクションコミックス) シートン 第2章―旅するナチュラリスト (アクションコミックス) シートン 第3章 (アクションコミックス)
先日の『神々の山嶺』に続いて、『シートン──旅するナチュラリスト』を読み始めました。本質的なところでこの話を受け入れるかどうかは別として、一般的にはすごく面白いと思います。
私は谷口ジローとはじめて出会ったのが、『孤独のグルメ (扶桑社文庫)』でした。『かっこいいスキヤキ (扶桑社文庫)』からの流れで読みました。『かっこいい〜』の作者は泉昌之ですが、要するにこれは久住昌之・原作/泉晴紀・画による共作であるわけです。泉晴紀は、久住的ギャグを十分理解した上で、絵を描いていると思われます。一方、『孤独の〜』は久住昌之・原作/谷口ジロー・画です。谷口ジローもまた、久住ギャグを理解していたかもしれません。しかし、谷口は自分の世界を貫いたように思えます。すなわち、クサイほど実直に原作の世界をマンガにしたのです。結果として、このクサイまでの実直さが久住のギャグを一層際立て、最高に上質な大人のギャグマンガとなりました。
神々の山嶺』もまた、谷口は夢枕ワールドを実直忠実にマンガにしました。ここでは、谷口のクサイまでの実直さは荒唐無稽な夢枕ワールドにある種のリアリティを獲得させることに成功し、あり得ないほど面白いエンタテイメントとなったのでした。
さて、『シートン』です。ここでも谷口は実直です。そして、今泉吉晴の原案もまた実直です。実直な原案を実直なマンガにすると、ものすごく実直になります。『孤独な〜』は大人のギャグを実直に描き、『神々の〜』は荒唐無稽な世界を実直に描き、最大限の効果を発揮しましたが、このものすごく実直な『シートン』は私的にはちょっと微妙な感じです。いや、ものすごく面白いんですけど、『孤独〜』と『神々〜』が面白すぎたのだと思います。
ちなみに、wikipediaアーネスト・トンプソン・シートンの項には、「コンラート・ローレンツシートンを動物の片鱗すら知らないとしてパウル・アイパーやベンクト・ベールィと共に批判した」と紹介されています。たしかに、シートンは動物の世界を擬人化しすぎているかもしれません。動物に「智恵」はあるかもしれませんが、人間的な「内面」はないでしょうから。

孤独のグルメ (扶桑社文庫)

孤独のグルメ (扶桑社文庫)

かっこいいスキヤキ (扶桑社文庫)

かっこいいスキヤキ (扶桑社文庫)